ありがとうございます。
では、いただいた文章をもとに、より詩的なリズムや象徴性を意識したエッセイに再構成してみました。
日常の描写から始まり、枕木や資材を通して「生きること」「支えること」「見えない役割」へと深めていく構成です。
枕木(詩的エッセイ)
駅へ向かう道すがら、
ひとりの高齢者が走っていく。
ただの通りすがり、でも、
一度だけ言葉を交わしたことがある。
ランナーではなかった。
けれど、それでよかった。
交わすのは、瞬間のあいさつだけ。
それでも、心に残る誰かがいる。
いつもの電車に揺られる。
窓の外は、濃霧。
景色は、夢のようにぼやけていた。
北越谷で降りると、霧雨が頬を打った。
その日、現場にトラックが入ってきた。
7.2トンの巨体。
鉄パイプ600本、角材200本、板200枚。
午後にはさらに1,300本が加わり、
そのすべてが音もなく積まれ、
運ばれていった。
黙々と、しかし力強く働く人たち。
90キロ近い体格で、資材を担ぎ、
クレーンから降ろされたパイプや角材を
迷いなく、迷いなく、積み上げていく。
私は、ただその現場を見守る。
作業の安全を、通行する人々の足元を、
少し離れた場所から、そっと守る。
10階建ての住宅――
最上階までコンクリートが流し込まれ、
鉄パイプの使命は終わった。
あれほどの重さと緊張を支えていたものたちが、
今、静かに荷台に眠っている。
一本一本、無限の時間を背負って。
新たな出番が来るまで、しばしの休息を。
角材もまた、同じように。
切断された木の面に、年輪が見える。
それは、時の渦。
中心に吸い込まれるように、
力がそこへ集まり、静かに宿る。
鉄パイプは空洞だった。
けれど、
その空洞があるからこそ、
支える力がある。
そのとき気づいた。
角材の中に、「枕木」という名のものがあることを。
太さ10センチ、長さ1メートル50センチ。
資材を積むその隙間に、そっと敷かれている。
投げられ、踏まれ、挟まれ、耐え抜いて。
最後には放られて、役目を終える。
それでもなお、あの枕木は――
誰よりも地に近く、
すべてを支えていた。
枕木。
その姿に、大木の記憶を見る。
年輪を重ね、生きてきた証。
それは、私たち人間の生き方と同じだ。
誰にも見えず、名も残らなくても、
力を吸い取り、静かに支える命がある。
目をこらさなければ、見えないもの。
よく見なければ、わからない。
帰宅すると、
孫が100メートル走で銀メダルを獲ったと知らせがあった。
全国にも、世界にも、同じようなタイムの者は無数にいる。
それでも、この瞬間、
一人の命が挑み、力を引き出し、
走り抜けたそのことに、深い意味がある。
そう思った。
私の今日もまた、
どこかで誰かを支えていたのかもしれない。
枕木のように。
名もなき、その重さで。
ご希望があれば、この詩的エッセイを詩集の一編として整えたり、朗読用に短縮したりもできます。
また、タイトルや最後の余韻などをもっと調整してもいいかもしれません。いかがでしょうか?